壁クロスの張り替えと聞くと、多くの人が、新しいクロスを壁に貼っていく華やかな作業を想像するかもしれません。しかし、プロの職人が最も時間と神経を注ぎ、そして仕上がりの美しさを左右する最も重要な工程は、実はその下に隠された「下地処理」にあります。「壁は下地が9割」と言われるほど、この地味で目立たない作業こそが、リフォームの成否を分ける心臓部なのです。なぜ、それほどまでに下地処理が重要なのでしょうか。その理由は、壁紙という素材の特性にあります。壁紙は、非常に薄いシート状の素材です。そのため、下地の状態がそのまま表面に現れてしまいます。もし、下地に凹凸や穴、あるいは汚れが残ったまま新しいクロスを貼ってしまうと、その凹凸が影となって見えたり、汚れが浮き出てきたりと、せっかくの美しいクロスが台無しになってしまうのです。では、具体的な下地処理とは、どのような作業なのでしょうか。まず、古いクロスを剥がした後の壁の状態を確認することから始まります。表面のビニール層だけが剥がれ、薄い裏紙が壁に残っている場合は、この裏紙が次のクロスを貼るための下地として機能します。しかし、もし裏紙が大きく破れていたり、浮き上がっていたりする場合は、その部分をスクレイパーなどで丁寧に取り除く必要があります。次に、壁に画鋲の跡や、小さなひび割れ、凹みなどがある場合は、「補修パテ」を使って、それらを一つ一つ丁寧に埋めていきます。パテが乾燥したら、サンドペーパーで表面を研磨し、壁全体を平滑な状態に整えます。この作業を怠ると、光の加減で凹凸が目立ってしまいます。さらに、下地がコンクリートやベニヤ板の場合、あるいはカビの発生が心配される場合は、「シーラー」と呼ばれる下地処理剤を塗布します。これは、下地からのアクの染み出しを防いだり、壁紙の接着力を高めたり、防カビ効果を発揮したりする、非常に重要な役割を果たします。一見、地味で面倒な作業ですが、この下地処理という「化粧下地」を丁寧に行うことこそが、シミ一つない、プロのような美しい仕上がりを実現するための、唯一にして絶対の道なのです。
仕上がりが激変!壁クロス張り替え前の下地処理の重要性