大きな地震の揺れが収まった後、まずは身の安全を確保し、家具の転倒などを確認するのは当然のことです。しかし、それと同時に、家の建物自体がどれだけのダメージを受けたのかをチェックすることも、その後の安全な生活のために非常に重要です。そして、そのダメージが最も分かりやすく現れる場所の一つが、「壁」です。地震後に発生した壁のひび割れは、単なる表面的な傷ではなく、家の耐震性が低下していることを示す、深刻な「危険信号」である可能性があるのです。地震の後に、特に注意深く観察すべきひび割れには、特徴的なパターンがあります。最も警戒すべきなのが、建物の開口部、つまり「窓やドアの隅から、斜め45度の方向」に伸びるひび割れです。これは、地震の強烈な横揺れによって、建物全体が菱形に変形しようとした際に、最も力が集中する部分に生じる「剪断クラック」と呼ばれるものです。このタイプのひび割れが家のあちこちに見られる場合、壁の内部にある、建物の耐震性を担う「筋交い」という重要な部材が損傷していたり、接合部の金物が緩んでいたりする可能性が考えられます。また、建物の土台である「基礎」部分のコンクリートに生じたひび割れも、極めて重要です。幅が広く、深いひび割れや、ひび割れを境に段差が生じているような場合は、基礎そのものが破壊されている危険性があり、建物の安全性を根本から揺るがす、極めて深刻な状態です。これらの危険なひび割れを発見した場合、絶対に放置してはいけません。見た目は小さなひび割れでも、次に来るかもしれない余震や、将来の大きな地震によって、損傷が一気に拡大し、最悪の場合、建物の倒壊に繋がる恐れもあります。もし、こうしたひび割れを見つけたら、まずはスマートフォンなどで日付と共に写真を撮って記録しておきましょう。そして、何よりも大切なのは、速やかに建築士や耐震診断の専門家に連絡し、建物の状態を詳しく診断してもらうことです。地震後の壁のひび割れは、家が発する悲痛な叫びです。その声に真摯に耳を傾け、適切な手当てを施すことが、安心して暮らし続けるための、私たち住人の責務と言えるでしょう。
地震後に必ずチェック!壁のひび割れが示す家の耐震性の危険信号