ある日、ふと自宅の壁に目をやると、これまでなかったはずの一本の線が走っている。それは、多くの人にとって不安な瞬間です。この壁のひび割れは、一体なぜできるのでしょうか。単なる見た目の問題なのか、それとも家の安全に関わる危険なサインなのか。パニックに陥る前に、まずは落ち着いて、ひび割れが発生する主な原因と、その危険度を見分けるための基本的な知識を身につけることが、適切な対応への第一歩となります。壁のひび割れの発生原因は、一つではありません。大きく分けると、「経年劣化や自然現象によるもの」「外部からの影響によるもの」、そして最も注意が必要な「建物の構造に関わるもの」の三つに分類できます。最も多く見られるのが、経年劣化や自然現象によるものです。家は、木材やコンクリート、モルタルなどの建材で構成されていますが、これらは完成後も空気中の水分を吸ったり吐いたりして、わずかに伸び縮みを繰り返しています。特に、新築から数年間は、建材が乾燥していく過程で収縮し、その歪みに耐えきれなくなった壁の表面に、髪の毛のような細いひび割れ(ヘアークラック)が生じることがあります。これは、ある程度は避けられない生理現象とも言えます。次に、家の外からの影響も原因となります。家の前を大型トラックが頻繁に通る、近所で大規模な工事が行われている、といった日常的な「振動」も、積み重なることで壁に細かなひび割れを生じさせることがあります。そして、最も警戒すべきなのが、建物の構造そのものに関わる問題です。大きな「地震」によって建物に強烈な力が加わったり、弱い地盤が不均一に沈下する「不同沈下」によって建物が傾いたりすることで、その歪みが壁のひび割れとして現れるのです。これらは「構造クラック」と呼ばれ、放置すると非常に危険です。ひび割れの危険度を見分ける最初のポイントは「幅」です。幅0.3mm以下のヘアークラックは、緊急性が低いことが多いですが、それを超える太さのひび割れは注意が必要です。原因によって対処法は全く異なります。まずは、あなたの家の壁のひび割れを冷静に観察することから始めてみましょう。
壁のひび割れ、その原因と危険度の見分け方